OB・OGメッセージ

専門調査員 アラブ首長国連邦大 K・Hさん

アラブ首長国連邦

一般事情

アラブ首長国連邦
面積:83,600平方キロメートル(日本の約4分の1。北海道程度)
人口:約1,006万人(2023年:IMF)
首都:アブダビ
民族:アラブ人
言語:アラビア語(公用語)、英語
宗教:イスラム教
                       外務省HPより

留学関係のアブダビでのイベントNajah Festivalにて、日本語等を勉強中の学生や東海大学からの留学生と

プロフィール

氏  名:K・Hさん
赴任公館在アラブ首長国連邦日本国大使館
職  種:専門調査員
在職期間:2019年5月~2022年5月

*担当事項
・総・政務班所属 UAE内外政、王族研究
・広報文化班兼務

*専門調査員になるまでの経歴、専門(学部、大学院、卒業後)
同志社大学文学部文化史学科で日本文化史/博物館学芸員課程修了、その後は5年ほど公共放送記者として事件・災害・地方行政・政治など様々な分野で取材活動を行いました。英国のイースト・アングリア大学の修士課程で紛争や国際関係を学び、UNDPでのインターンシップを経て約3年パレスチナの日本国代表事務所で草の根委嘱員として勤務した後は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会や外務省本省勤務後、専門調査員に応募しました。

*専門調査員を知ったきっかけ
記者の時に取材で行かせてもらった講演会で、登壇者だった中東研究者の方に、「中東での研究に関心があるが、どうやってそのような仕事を探せばよいか分からない」と話すと、「専門調査員というオプションがある」と教えて下さいました。ふと、このことを思い出し、応募したのがきっかけです。

*専門調査員を希望した動機、期待していたこと
受験時はシリアでの勤務を希望していました。内戦前にシリアに滞在し、大学院では武装勢力や紛争について勉強していたので、実際に現地で勤務してみたいと思ったからです。しかし、打診されたのは、希望地として記載していなかったUAE。知人の中東研究者や外務省関係者に相談したところ「湾岸地域から中東を見てみるのも良いのではないか」とアドバイスを受け、アブダビ行を決めました。全く土地勘も知識もない地域へのチャレンジでしたが、「別の地域から中東を知る」ことができ良かったと思います。

*業務、任期中に書いたレポート、調査出張などについて
・現地報道のフォロー
・他国の外交官や武官と情報交換
・王族研究やUAEの内政・外政にまつわる情報収集
・大使随伴に伴う他首長国への出張や、王族・閣僚との面談同席
・日本・UAE外交関係樹立50周年に合わせた両国関係50周年誌の冊子づくり
・若田宇宙飛行士へのインタビュー
・大使のソーシャルメディア上での活動支援や撮影
・メディア対応
・インスタ立ち上げ等

他にも、総理訪問の際には、報道ぶり班・外国プレス班として、外相訪問でもUAE閣僚との面談設定や、ドバイエキスポ訪問アレンジを行う等、責任ある仕事を任せてもらいました。
コロナ期間と重なったことや、頻繁な首脳往来により調査出張には行けませんでしたが、UAE建国時から発行されている日本・UAE協会紙に、足掛け2年UAE外政についての連載を掲載させてもらう等、何度か執筆機会を頂きました。

*専門調査員後(現在も含め)の仕事と、その仕事(分野)を選んだ理由
UAEで専門調査員の任期を終えた後に、そのままドバイで日本の商社の中東地域代表部でリサーチアナリストとして働きました。業務内容は、中東全域の情勢を把握、分析し、同僚や他の地域・本社の方に情報を提供、リポートを書くこと。社内のインテリジェンス体制の構築も仕事の一つでした。中東域内における国家関係や、国際情勢が変化する中で、自分の経験が生かせると思い、この仕事を選びました。

一方、2023年前半ごろ、サウジ・イランの国交正常化やシリアのアラブ連盟復帰等、シリアの「国際舞台への復帰」の兆候が見られる中、やはりシリアで働きたいという気持ちがあったため、現在はレバノンに駐在しつつシリアに関する業務に携わっています。

*将来について
中東での経験が長くなり、また国際関係に関心があるので、この何れか、もしくは両方の分野に関わり続けられたらいいと思っています。

*専門調査員試験を受けるに当たってどのような勉強をしたか
第一希望がシリア、第二希望はイスタンブールだったので、シリアとトルコ情勢に関する本を少し読みました。シリアについては、応募時(2018年)のシリアの状況を踏まえて、アサド政権、国連、外部勢力(反体制派や域内外国家含む)のスタンスや其々の関係性について、トルコは大統領選直後だったので、投票動向やその背景にある社会・政治情勢を理解することを意識しました。

*受験を考えている方へのメッセージ
専門調査員は、外交官ではないものの、任国で日本の顔としての役割の一端を担う責任のある仕事です。その立場故、公私に亘り意識を以たなければならない反面、実際に当該国の国家指導者や政府高官と相対する貴重な機会や、官僚、研究者、現地の人々等様々な人脈を得ることができ、様々なことを学ぶことが出来ます。他にも仕事やイベントを通じて知り合ったUAE人からは、彼らのベドウィンや漁民としての歴史や風俗・宗教・コミュニティ、また現在の国の状況への見方を教えてもらい、地域での経験が豊富な他国外交官や研究者からは、地域の力学、リーダー達の考え方、それぞれの二国間関係や軍事関係について考えを聞くことができ、ここで得た知識や視点は自分の中での宝となっています。

それもこれも、大使館で理解のある上司や同僚の下、得意な分野をどんどん任せて貰い、とても忙しいながらも興味を伸ばしながら楽しく仕事をできたからだと思っています。
また私の場合、大使館で得た経験を活かし、その後も現地の別の首長国(ドバイ)で勤務する機会を得ることが出来ましたし、ドバイでの様々な求人やスカウトの情報に接し、これまで自分の中になかった将来的な生き方や、職種、業界等へのスコープを広げることができました。

専門調査員は、やりようによって如何ほどにでもチャンスを広げられる仕事であり、大使館の同僚や現地職員も生活をサポートしてくれるので、皆さんも楽しんで機会を最大限に活用されてください。

※掲載写真の権利は、在アラブ首長国連邦日本国大使館にございます。

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